最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)6189号 決定 1954年8月20日
本籍
名古屋市熱田区旗屋町八三番地
住居
前同所
ゴム靴修繕業
鈴木一雄
大正四年九月一二日生
右の者に対する強盗、住居侵入被告事件について、昭和二七年九月一六日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人日野魁の上告趣意第一点について。
所論は、原審で控訴趣意として主張判断のなかつた事項を新らたに当審で申立てる単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(そして、記録によれば、所論各証拠は差戻後の第一審で取調べられたものであることが明らかであるから、差戻後の第一審判決がこれらを当公廷における供述、または当審の検証調書等として証拠に挙示しているのは正当であり、これを維持した原判決にも何等所論のような違法はない。)
同第二点について。
論旨引用の判決は裁判所法四条の拘束力があるにとどまり、いまだ刑訴四〇五条三号にいわゆる判例には当らない。従つて所論は判例違反をいうけれども、その実質は単なる法令違反の主張に帰し同四〇五条の上告理由に当らない。また、差戻後の第一審判決は所論証第三、四号を本件犯罪事実認定の証拠として挙示していないばかりでなく、進んで、それが証拠となり得ないゆえんをも説示しているから、同判決は所論判決の判断に従つて審理裁判したことが明らかであり、なお、差戻後の第一審判決に虚無の証拠を採証した違法のないことは、既に、論旨第一点につき説明したとおりであるからこれを維持した原判決にも所論のような違法は存しない。
同第三点について。
所論は、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また、記録を調べても、本件につき、刑訴四一一条を適用すべき事由ありとは認められない。
よつて、刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)